動的平衡その2 ~治療薬の考え方とよいお医者さんの見分け方~

前回も書きましたが、薬剤によっても病気という不平衡を正すことはできます。
ところが使い方を間違えると自然治癒力が作り出す平衡状態とは別の平衡状態を作り出してしまいます。
これが、いわゆる「薬が手放せない」状態です。

もしこの状態でさらに自然治癒力が働いたとすると、また不平衡状態に陥って、再び病気の様な状態になってしまいます。
ところがこれは真の平衡状態に戻るための過程ですので、本来であれば薬剤を減らさなくてはならない不平衡なのです。

ところが多くのお医者さんはこれを病気が再び悪くなったと勘違いして薬の量を増やしたり、種類を増やしたりしてしまうのです。
これではいつまで経っても薬が手放せない状態が続いてしまうことになります。

現実にはどんな病気でどの程度こんな現象が起こっているのか、簡単に判別する方法はありません。
ただ慢性疾患で多くの薬剤を処方されていた方が、その数を減らしたところ調子がよくなったというのはよく聞く話です。

誤解のないようにお伝えしたいのは、「薬を使うのを止めなさい」といっているわけではありません。
薬によって多くの命が救われ、多くの病気が管理できるようになったのは事実です。
ただ、やみくもに症状の変化に合わせて薬を追加していくやり方はちょっと考え直した方が良いとお伝えしたいのです。

病院などで使われる薬剤(処方薬)は臨床試験のデータを元に国によってその使用が許可されています。
ところが多くの薬剤の承認前臨床試験は単独でその薬剤を使った場合のデータです。
あるいはせいぜい2種類くらいまでの併用です。
それから先の4剤、5剤の併用というのはお医者さんが勝手にやっている処方で、
決して国が承認して保証している使用方法ではないのです。

年を取ってくると、いくつかの病気が重なってきますが、それらの病気だけを見てしまいますと、たぶんひとつひとつの病気に対しての治療薬として薬の数が増えてきます。

お医者さんは、「病気がたくさんあるのだからそのひとつひとつの病気に合わせて処方してどこが悪い」 というかもしれませんが、対象は一人の人間です。
その体の中でいろいろな薬剤が混じり合って、体の平衡状態がどうなっているのか、そんな臨床試験のデータはどこにもありません。
そんなことを認識して薬を使っていただいているお医者さんは残念ながらごく少数です。

ではそういうことに気を遣っているお医者さんとそうでないお医者さんの見分け方として、一番大切なことは、話をよく聞いてくれるお医者さん。

患者さんの体の変化は一律ではありません。その変化は患者さん自身が一番よく分かっています。
しかし患者さん自身は、医学知識が十分あるわけではありませんので、その変化が何を意味するかわかりません。

でもその変化を言葉で表現することはできますね。
良いお医者さんはそうした患者さんの変化をその言葉の中でしっかり捉えて、治療に役立てます。

ところがそうでないお医者さんは、患者さんの発する症状の変化を一言二言聞いただけで、あたかも別の病気が起こったように考え、その症状変化に合わせて別の薬剤を処方します。
ですから症状の変化をいうたびに薬剤の種類が3つ、4つと増えていくようであれば要注意です。

そんなときは勇気を出して、なぜ薬が増えたのかを聞いてみましょう。
よく説明してくれるようなら大丈夫!

皆さんが、今かかっておられるお医者さんはいかがでしょうか?