突発性難聴体験記

先日突発性難聴という病気になってしまいました。
歌手の浜崎あゆみさんがなったことで有名になった病気です。
浜崎さんは残念ながら完全には回復しなかったようですが、
私の場合幸いにもほぼ完全に回復しました。

結構多い病気なので、少々長くなりますが、参考までに経過を書くことにします。

始まりは耳が詰まったような感じです。
病名のとおり、まさに突発性で私の場合は左耳でした。
最初はジムでの水泳で耳に水が入ったのか、
風邪を引いて耳管
(図を参照:鼻とつながっており、内耳の気圧を調整する働き)が
閉じてしまったのかと考えていました。
感覚としてはちょうど高いところに急に上ったときに耳がボーとするといった感じです。
唾を飲んだり、あくびをしてもいっこうに改善せず、
電話を左耳で聞こうとするとエコーがかかったような声になり
よく聞こえないのです。

たまたま、以前に大学時代の同級生とゴルフをやったとき、
その中の一人が突発性難聴になったという話を思い出し、
これが噂の、と変な感心をしてしばらく様子を見ていました。
しかしいっこうに良くなる気配はなく、
耳鼻科をやっている同級生に電話をしました。
そうすると2,3日で回復しなければ早く耳鼻科で検査をして、
治療を始めた方がよいとのこと。
彼曰く、
「治療開始は早いほうが治りは良く、遅れると回復しないこともある」とのことでした。
受診した耳鼻科では、滲出性中耳炎でも同じような状態になるということで
鼓膜も診てもらいましたが、こちらは正常。
聴力検査では中音から低音域にかけて
みごとに50デシベル程度まで低下していました。

原因としてはストレスが一番多いようで、
ウイルス感染が原因という説もありますが、実はよくわかっていないようです。

受診した耳鼻科の先生からは最近ストレスは多くありませんか、
としつこく聞かれました。
忙しいことには変わりありませんが、それをストレスと感じたことはなく、
後で精神科の友人から聞きましたが、
そういう人間が過労死しやすいのだそうです(この話は別の機会にまとめたいと思います)。

突発性難聴

それはともかく、耳で音を聞くとはどういうことかを図を見ながら解説しましょう。
耳で集められた音は外耳道を通って、鼓膜をふるわせます。
鼓膜の振動は耳小骨(鼓膜側から槌(つち)骨、砧(きぬた)骨、
鐙(あぶみ)骨といって人体の中で一番小さな骨です)を伝って
蝸牛と呼ばれる、まさにカタツムリのような形をした組織に入ります。

さらに蝸牛の中に並んだ細かい毛を振るわせてそれを電気信号に変換して神経に伝え、
音として感じ取ります。

蝸牛の入り口は高い音を、奥に行くに従い低い音を感じ取るような
仕組みになっています。突発性難聴という病気の実態としては、
蝸牛の中にリンパ液が充満していて、
その対流が滞ることが原因ともいわれています。

ちなみに蝸牛にくっついている3本のループは半規管といい、
体の傾きや動きを感じ取る組織です。

さて突発性難聴の治療としては、副腎皮質ステロイド剤が基本で、
かなり大量に使います。私はそのまま仕事をしながら治療しましたが、
ひどい人では入院して治療する場合もあります
(ほんとうは外来通院でも家で安静が基本で、私のように仕事をしていてはいけません)。

ステロイド剤以外ではビタミンB12がよく併用されます。
それ以外では高圧酸素療法なども使われているようですが、調べてみたところ、
エビデンスの高い治療法は、ステロイド剤以外無いようです。

副腎皮質ステロイド剤は古くから使用され、
いろいろな病気の治療に欠かせない治療薬ですが、
副作用も多く代わりの薬剤が望まれています。
しかし多くの分野で相変わらず治療の第一選択薬となっています。

私の場合、3日間ステロイド剤を飲んだところ、
聴力検査で中音域がまず改善して、更に3日間で低音域も正常に近くもどりました。
耳の詰まった感じは徐々に軽くなり、その後3,4日でそれも改善しました。

いろいろな統計がありますが、50%から70%はほぼ完全に回復し、
10%程度は回復しない、特に障害の程度が強いと回復が悪いようです。
ということで、病気にならないように食事や運動に気をつけていても、
なる病気もあるということを、身をもって体験しました。

だから何もやらなくて良いということではなく、
気をつけていれば防げる病気はしっかりと注意して、
少しでも病気になる確率を下げることが肝要ですね。