病気と薬の話 その2

前回のブログで、薬は病気を治しているのではない、という事を書きましたが、特に糖尿病、高脂血症(脂質異常症ともいいます)などの生活習慣病系の薬は「病気を治しているわけではない」薬の代表のようなものです。
たとえば糖尿病の薬を飲みますと、血糖値が下がります。高脂血症の薬もしかりで、この薬を飲みますと血液検査でコレステロールや中性脂肪が下がります。しかしそれは糖尿病や高脂血症が治ったという事を意味していません。単に薬によって検査値が良くなったに過ぎません。そこを誤解すると悲劇が起こります。

ある方が健診で血糖値が高かったために病院に行きました。そこで検査の結果糖尿病ということになり、糖尿病の薬が処方されました。3ヶ月くらい飲んだところで、血糖値は完全に正常範囲に戻りました。その方はすっかり糖尿病が治ったものと思い、その薬を飲むのを止めてしまいました。しばらくするとどうも体がだるい、調子が悪い、ということで再び病院を訪れました。そうすると糖尿病は以前よりはるかに悪くなった状態になっていました。これは糖尿病の薬の持つ意味をしっかり患者さんが理解していなかったことによるものです。

血液検査のデータが良くなったのに、病気が治っていない、とはどういうことでしょうか。
生活習慣病の多くは文字通り生活習慣が原因で起こってくるものです。長年の暴飲、暴食が原因といえます。本人は暴飲・暴食とは思っていないでしょうが、体にとってはしっかり暴飲・暴食であったわけで、そのため、ある時点から体が耐えきれずに血糖値やコレステロール値が上昇してくるというわけです。

血糖値やコレステロール値が上昇すると、体の組織に悪さをして、正常な代謝や機能が失われてきます。そうなると生命が危なくなるので、それ以上体にダメージを与えないようにするのが、糖尿病やコレステロールの薬の役割なのです。それらの病気の根本的な治療には原因である生活習慣を直すほかありません。

もちろん病院では薬を出すだけではなく、食事指導や生活習慣指導をやってくれます。すわなち、薬ではなく生活習慣の修正の方が根本治療なのに、そちらはそっちのけで薬ばかり一生懸命飲んでも一向に病気そのものは治らないのです。

日本の保険医療システムにも問題があります。根本治療であるはずの食事指導や生活習慣指導には非常に低い診療報酬しかついていません。病院としては食事指導がしっかりできる管理栄養士を雇って指導するより、薬を処方する方がより多くの利益を得られるのです。
ちょうどこれから国の行く末を決める選挙です。超高齢化社会を迎える中で医療費の問題をどうするかは論点のひとつですので、みなさんもしっかり議員の主張に耳を傾けましょう。

話がわき道にそれましたが、何はともあり、一番国民医療費に負担をかけない方法は、地道に生活習慣を直していくことで、そうすればいつの日か必ず薬が手放せる日が来ます。
みなさん、ぜひがんばってくさい。