クスリの幻想 -その1 薬のタネ-

お医者さんが病気を治してくれる、薬を飲めば病気が治るというのは幻想に過ぎないと、ここ何回かのブログの中で書いてきました。

それでは薬とはいったい何なのか、それを少しわかりやすく書いてみたいと思います。

人は大きな化学工場です。何万種類もの化学反応が体の中で起こって、生命活動は営まれています。
この化学反応はいろいろな状況で変化が起こります。
たとえばある化学反応でAという物質とBという物質が化学反応を起こしてCという物質ができるとします。
これをA+B=Cと表現しましょう。
ところがA+BがCにならずに、Dになってしまったとします。もしA+B=Cの先の化学反応がC+D=Eだとすると、Cができないので、この化学反応が起こらないことになってしまいます。

そうするとDがどんどんたまって来るという結果になります。
ところがこれだけでは病気にはならず、かわりの反応が起こってDという物質を処理してくれます。
ところがこんなことがいろいろと起こってくると、細胞の働きがおかしくなってきます。
それでもおかしくなった細胞を取り除いて、別の細胞を置き換えるような働きも起こってきます。

しかしおかしくなった細胞が置き換わらずにどんどん増えてしまうと、その細胞の属する臓器の働きがおかしくなってきます。
こうなって初めて病気として症状が出てくるのです。病気の起こり方を研究している人たちは、病気が起こってくる化学反応の異常を突き止めようとしているのです。
そしてある要となる化学反応の異常を突き止めることができれば病気が解明されたとなるわけです。

最近の薬の開発はそんなところから始まります。
こういう薬は分子標的といって、ある特定の病気に関係している、化学反応を変化させるように働く化学物質をまず見つけ出します。
その化学物質の構造をいろいろと変化させて、狙った化学反応をもっとも強力に変化させる化学物質を作り出します。
それがまず薬のタネになるのです。