先日開催された第54回日本糖尿病学会(5月19〜21日,札幌市)に北海道を代表する人として脚本家の倉本聰氏が招待講演を行ったという記事が、ある医師向けサイトに掲載されていました。
興味深い記事でしたのでちょっと引用してその所感を述べたいと思います。
今回の東北大震災と福島原発の事故をみて、倉本氏は日本の歴史における「第3の敗戦」と位置づけ、この復興には既成概念の転換が必要としました。それは特に豊かさの象徴として電力があり、原子力発電があればこそ実現できた豊かさ、今後は今と変わらぬ生活を求めるのであれば原発は必要だし、今回以上の災害が起こることを覚悟しておかなければならない。
そうではなく、原発が必要なくなるようなもっと質素な暮しに戻るべきだという主張であったということです。
倉本氏は自身の作である「北の国から」を引用しながら以下のように発言されたとのことです。
「都会から電気も水道も通っていない富良野に移住した兄妹が
『電気がなければ暮らせませんよ。夜になったらどうするの?』と父に聞くと,
父は『夜になったら寝るんです』と答えた。
夜は本来寝るものだった。
それを明るくするために電気が発明され,
今はそれがまぶしいくらいに夜を圧してしまった。
ぼくが富良野に移住して初めての夜,手のひらすら
見えない闇の中で熊とお化けにおびえ,一睡もできなかった。
このまま闇が続くのではないかと考えていたところ,
鳥の声がかすかに聞こえ,
シュラフからおそるおそる首を出してみると,
森に光が差し,やがて太陽が上がってきた。
そのとき,太陽の光がこんなにありがたいものだったのかと
気付くと同時に,それをすっかり忘れていた自分にがくぜんとした。
本来,われわれは光と熱を太陽から得ていたが,
その根源を忘れ去っていたのだ。
当たり前過ぎることは忘れてしまう。
呼吸もそうだろう」
このような原始に戻る生活をしたいとは自分自身思いませんが、少なくとも非常に重要なことを提示してくれていると思います。
便利さ、豊かさの中で、人はサボることを憶えました。ただその豊かさは人が作り出した幻想かも知れません。
このお話を読んで、「地球リズム」という言葉が思い浮かびました。
地球は多くの生命をはぐくんで、それらの生命体は地球全体としてつながっています。
地球上にあるほとんどすべての生命体は地球のリズムで動いていますが、唯一人類は自分たちのリズムで動こうとしています。
地球のリズムから外れることは大きなエネルギーを必要とします。
都会では夜になっても電気のおかげで昼のように明るい世界が実現できています。
暗くなったら寝る、という地球リズムが完全に無視され、その分余分なエネルギーが使われているわけです。
これは今に始まったわけではなく、古代においては火のエネルギー、産業革命では熱と水蒸気のエネルギー、もっとも最近が電気エネルギーです。このような巨大なエネルギーを浪費することを憶えた人類は、地球を疲弊させ、また人自身も体の中で大きなストレスを抱え込むことになったのです。
たとえば肥満もそのひとつです。エレベーターやエスカレーター、自動車と便利なものを作り出し、エネルギーをそこで使って、自分自身ではその分サボる。消費していないのだから、摂取するエネルギーをもっと削減しないといけないのに、そちらの方はせっせと過剰に食べてしまう。
そしてその余剰エネルギーが脂肪としてたまるというわけです。そうしてメタボになって、さらに高血圧、糖尿病、心筋梗塞、脳卒中で早死にしてしまう。
そうすると最近のエネルギー節約は自分の健康のためでもある、ということなのですかね。
皆さんで一緒にがんばりましょう。