医師の哲学

従来の人間ドック型健診と今回のメタボ健診の違いを先日書きましたが、
このようなメタボ健診が立ち上がってきた理由は
医療を担う医師の考え方にも係わっています。

私自身長年医療に携わり、自分自身がそうだったのですが、
医師という人種は病気を見つけることに情熱を持っています。
たとえばある患者さんがある症状を訴えて病院に来たとします。
そうするとあらゆる診断手段を用いて、
何とか病気を見つけ出そうとするわけです。

もちろんそれが主たる仕事でもあります。
ところが、何も見つからないとなると、
「気のせいです」
「年だから仕方がない」
「自律神経失調症」などという診断?を下して、
以後その患者さんへの興味を失います。
もちろん患者さんはそのような診断を下されたからといって、
症状が良くなるわけではないですから、
また別の医師にかかることになります。

人間ドック型健診は、
スクリーニングされた「悪いところ」を持っていそうな患者予備群に対して
医療の枠組み中で解決しようというものです。
このこと自体に問題があるわけではありません。

ただ疑問に思うのは、
診断をつけて治療をすることだけが医師の仕事ではないはずだということです。
もちろん地域医療に携わっている医師の中には
その地域住民に対して病気の話や栄養の話などを積極的に行い、
地域全体の健康状態を改善しようと試みている立派な方も
数多くいらっしゃいますので、
私のような不埒な医師ばかりでないことは申し添えておきます。

私自身も上記のような過去の態度を反省し、
何とか予防医学に貢献できないかと考えている昨今です。