記憶とにおい

記憶の仕組みは完全に解明されたわけではないが、神経細胞同士が一定の回路を作り上げることで成り立っているらしい。

脳の組織はニューロンといわれる枝をたくさん出している神経細胞とその枝の先が他の神経細胞とつながるシナプスという接合部分から成り立っている。
すなわちある特定の刺激が神経細胞に加えられるとそれに対応するニューロン同士がつながり、特定神経回路が作られシナプスを通して回路に信号が流れやすくなる。

これが繰り返されることで記憶が固定する。強い刺激が加えられると信号の流れも強くなり、信号が弱いと固定される前に記憶が失われる、すなわち「忘れる」ということになる。
ものごとに集中するとすぐ覚えられるというのも、この入力信号の強さによるものだ。

脳はどの記憶を残して、どの記憶を捨てるかの取捨選択を入力信号の強度によって調節しているらしい。
すなわち多くのシナプスが同時に発火すると神経細胞の核の中にある遺伝子が働いてあるタンパク質をつくる。

このタンパク質がつくられると特定の記憶で作られた回路を残しておくようになる、ということがわかってきた。
この信号強度は間隔をおいた繰り返し刺激でも「重要信号」だと認識する。

記憶に係わる神経回路はちょうど耳の奥くらいに位置する脳の側頭葉にある海馬という組織に多く存在する。
ちょうどこの部分にはにおいを感じる神経回路も分布しており、においと記憶は結びつきやすい。
においは食べ物と直結するので、太古の昔に食べられるものと食べられないものを経験則で見分けていたときにできあがった合理的な連携なのかもしれない。