仏像が笑う?

日曜日朝の美術番組で、あるゲストが仏像の表情が毎回見るたびに変わるという話をしていました。
これは奈良薬師寺の金堂にある本尊の薬師如来のお話しです。

ゲストさんは薬師寺が好きで、機会がある度にここを訪れ、この薬師如来をお参りするのだそうですが、
お参りするたびに薬師如来の表情が違っているというコメントをおっしゃっていました。

皆さまはこのお話をどう思われますか?

まさかミステリーではあるまいし、
金銅性の仏像が表情を変えるなど現実にはあり得ないように思えますが、実は、他者の顔の表情は自分の心の表象でもあるのです。

人の脳は、こと顔の表情に関しては誠に敏感で、ほんの数ミリの違い、数ミリの動きを読み取ります。また顔と同じような配置の物体も顔として認識してしまいます。
よく車や機械の部品が偶然顔のような配置になっていたりすると、怒っている顔や笑っている顔をそこに見てしまうことを経験した方は多いのではないでしょうか。
ことほど顔に敏感なヒトの脳ではありますが、敏感すぎて自分の心の有り様をそこに反映してしまいます。

先の仏像もその現象で、光の当たり具合で微妙に表情に変化が出て、それに自分の心が反映されるのです。
ある有名な類人猿学者はヒトを定義して、他者に自分を見る動物といっています。

たとえば自分が嫌いだと思っている人は相手も同じように自分のことを嫌っているように感じることは多いと思います。
ところがよくよく話をしてみると、それはとんでもない誤解であることも多いのです。
それは自分の心の有り様を相手の表情に写し出して、それを見ているのです。

人という動物はそれだけ他者とのつながりを求めていますし、そのつながりの中で生活を営んでいます。
そんなわけで目があったときに無表情だったり、暗かったりすると、相手は途端に自分のことを嫌っていると思ってしまうかもしれません。

せめて目があったら、ほんの少しでも微笑んでみてはいかがでしょう。
そこから何かが生まれるかもしれませんね。