10月24日発行の日本の出版社・マガジンハウス社が発売している男性向け健康雑誌、ターザンに私が解説したの禁煙記事が掲載されました(10/242013 No 637)。
P56~58「禁煙すると肥るってホント?その真偽とメカニズムを探る」です。
喫煙者にとってタバコを吸っていると肺ガンになる、という話は耳にたこができるほど聞かされていると思いますが、今回は「糖尿病にもなってしまいますよ」という話です。
さて、禁煙すると肥るという話はよく聞きます。
これは人によりけりですが、平均的にはどれくらい肥ると思いますか?
答えは、5~6kgほど肥るといわれているのです。
(飛び抜けて増える人がいるので、平均値としてはこの程度となりますが、実際には2~3kg程度がほとんどですので安心してください)。
しかし、うまく管理することによって、禁煙しても体重が増えることを避けることができます。
詳細は特集記事を読んでいただければよいのですが、特に今回は喫煙とメタボ・糖尿病の話をしてみたいと思います。
喫煙者が肥らない一番の理由は簡単にいえばタバコの煙は毒物だということです。
毒物を体に入れていればそれを解毒するためにエネルギーを使いますし、解毒しきれない毒物が体に作用して、簡単にいえば体がやつれて体重を増やせない状況を作り出しています。
またタバコのニコチンが脳に作用して、食欲は落ち、さらに味覚も鈍感になり食事が自ずと濃い味好みになってきます。
だいたい喫煙習慣は20歳頃にはついてしまいますので、一番代謝が盛んな時期から毒物にさらされる訳です。
従ってその頃の体重が比較的維持されたまま年齢を重ねていきます。
また喫煙者によってはこれまたタバコの影響により食事が少量では満足できず、大量に食べる習慣ができあがります。
それでもそれほどは巨漢にならないので、自分は肥る体質ではないと勘違いしてたくさん食べる習慣のまま30歳代、40歳代に突入します。
さてそこで、30歳代、40歳代になって健康意識が芽生えて、いざ禁煙となるとこれらのつけが一挙に襲ってきて、中には肥ってしまうという人も出てくるわけです。
せっかく健康になろうと禁煙したのに、体重が増えてしまった、こんなことなら禁煙しなければよかったとなるわけですが、やつれて痩せていたのが健康になって体重が元に戻ったということですので、決して禁煙が悪いわけではありません。
一方喫煙は、糖分の代謝にも悪影響を与えます。
食事から糖分が吸収されると血糖値が上がります。そうすると膵臓からインスリンというホルモンが出て、脳や筋肉などで使えるように組織の中に運び込みます。そうすると血液の中から糖分が移動して、血液中の血糖値は下がることになります。
インスリンは糖分という重要なエネルギー源を管理する重要なホルモンというわけです。さらにインスリンが十分力を発揮するためにはサイトカイン(ホルモンの働きを手助けする物質)というタンパク成分も重要な鍵を握っています。
さて喫煙するとどうなるのでしょうか。
まずインスリンの作用を助ける役割の善玉サイトカイン(アディポネクチンなど)が減って、インスリンの邪魔をする悪玉サイトカイン(TNFαなど)が増えてしまいます。そのためインスリンが喫煙しない人に比べて多く必要になります。
喫煙者では総じてインスリン濃度が高いということが臨床研究で証明されています。この状態をインスリン抵抗性といい、肥満が原因で起こるメタボとそっくり同じ現象が起こっているのです。
これが長年続きますと、インスリンを作る膵臓が疲れ果てて、必要なインスリンを作り出せなくなってしまいます。これが糖尿病という状態です。
つまり喫煙者というのはたとえ痩せていたとしても、体の中身はメタボというわけです。
実際、喫煙者(1日1箱くらいのスモーカー)が糖尿病になる危険度はタバコを吸わない人に比べて3倍程度高くなります。肺ガンになる危険度は非喫煙者に比べて10倍とも50倍ともいわれていますが、肺ガンが起こる頻度そのものは高くないので、あまり実感がありませんが、糖尿病は元々の発生頻度そのものが高いので、喫煙者ではもろに糖尿病の危険度を実感することになります。
来る11月14日は世界糖尿病デーということで、世界中で増加している糖尿病を防ごうというキャンペーンが広がっていますが、糖尿病にならないようにするためには、喫煙者ではまずタバコを止めることが第一歩ということを強調したいと思います。
うまく管理しながら禁煙をしたい方、禁煙に興味がある方は、当クリニックの禁煙外来にご相談ください。