あるスポーツジムのサウナでの会話

人と人、人と機械の葛藤は、脳の習慣化回路が原因していることもしばしばです。
では、習慣化回路とは一体どんなものだと思いますか?

先日、スポーツジムのサウナでみた一例をご紹介します。

サウナには私ともう一人の客の二人だけでした。
その客は明らかに苛立っている様子。
理由はよくわかりませんでしたが暑さに苛立っているようでした。
サウナだから暑いのに決まっていますが、躍り食いで焼かれるアワビのように、体をくねらせていました。そこに若い従業員スタッフが元気に入ってきました。

そのサウナには15cm四方の小さなタオルが、汗で濡れた腰掛けや床を拭くために7、8枚掛かっています。スタッフ君はそのタオルを換えに来たのでした。
さっそく中にいた客がくだんのスタッフ君に「温度が高い」と文句を言い始めました。

黙々とタオルを換えているスタッフ君、すかさず「今見てきます」と返事はよかったのですが、タオルを換えるのが先、とばかりにいっこうに行こうとしません。

その客はなかなか調節に行かないスタッフ君にいらいらして、「普段は温度設定が100度以下なのに今日はなぜ102度もあるのだ」、とより詳細に文句を言いました。

きっとこの客は温度が高いといっただけでは説得力がないとでも思ったのでしょう。
スタッフ君は再度「すみません、今見てきます」といいつつ、相変わらず彼の義務であるタオル換えをしています。

しかしスタッフ君もさすがに客の視線を感じてか、見てきますだけでは済まないと思ったのか、お客さんの出入り具合で温度も変わってきますので、とすぐに設定を変えに行かない言い訳し始めました。

私には最初、その客の意図が全くわかりませんでした。
暑いと思ったら短めに切り上げて出ていけばよい話です。
入っていられるのはせいぜい5分から10分、スタッフ君が機械室に行って調整しても、温度が低くなるまでその客がいるとは思えませんでした。

体調によっても温度の感じ方は変わります。しかしその客はあくまでも機械の再調整を要求しています。
機械は調節できるが、人間の体は調節できない、とでも言いたげでありました。
しかしこの場合、どう見ても人間の側で調節した方が早いと思われるのですが、意外とそれは難しいのです。

ヒトの脳には習慣化回路があって、行動が一端習慣化してしまうと、そこからはずれた場合、非常に居心地が悪くなります。
たとえばサウナは10分、と決めていると1分でも早く出てしまうととんでもない敗北を喫したような気分になってしまうというのもよくあるパターンです。

またこのスタッフ君もタオル換えのためにサウナに入ったら、全部すませることが習慣化されてしまっているのです。

さて、スタッフ君が出て行って2分ほどの後、その客も出て行きました。
そしてサウナに戻ってくることはありませんでした。

私もサウナから出てシャワーを浴びた後、気になったのでもう一度はいって温度を確認してみました。
相変わらず温度計は102度を示していました。

習慣化回路に入っている行動は記憶にも残りにくいのです。

皆さんの習慣化された行動には、どんなものがあるでしょうか?