このところインフルエンザウイルスのネタでブログを書いていたせいか、
映画「感染列島」に興味があり、見に行ってきました。
映画評論ができるほど映画を見ているわけではありませんので、
ほんの個人的な感想を書きたいと思います。
内容は恋愛ものとしてみればまあ感動作品だと思いますが、
サイエンスフィクションとして期待したらがっかりです
(ちなみに私は後者を期待して見に行きました)。
まだ見ていない人は種明かしにもなるので、
ここから先は読まない方が良いかもしれません…。
とはいってもサイエンス部分の内容は至って単純で、
厚生労働省のパンデミックインフルエンザのシミュレーションに沿った展開で、
一般の人たちに恐怖心を植え付けるには成功している映画かもしれません。
そこでサイエンスの面で、私が気になった点をいくつか取り上げてみたいと思います。
当初トリインフルエンザの人感染型が
パンデミック(広範囲感染流行)状態になったようにみえた感染も、
実は新種のウイルスであったというストーリー展開です。
ただ呼吸器からあのように出血するのは、新種のインフルエンザではあり得ない話で、
おそらくエボラ出血熱ウイルスあたりから思いついたのかもしれませんが、
そうだとすると、あれほど短期間に感染が広がる可能性はほとんどありません。
映画の中で研究者も言っていましたが、
感染したヒトを殺してしまうようなウイルスは
生物学的(ウイルスが生物かどうかはまた別問題ですが)には大失敗で、
かなり限定した感染になるはずなのです。
また外部の集団にあれだけ感染が広がっていながら、
治療に当たる医療関係者にはごくわずか(ストーリー上重要な人物のみ感染)しか
感染者がでていないのも不思議です。
マイケル・クライトンのアンドロメダ(邦題名アンドロメダ病原体)のような
巧妙なサイエンスフィクションにするためには、
ウイルスの特徴にもっと工夫があるべきでしたね。
映画の想定では、せっかく
南海の孤島にいたコウモリに元来生息していたウイルスというので、
そこをヒントにすごい治療法が出てくるのかと思ったら、
なんと昔ながらの血清療法(ウイルス感染を克服した人の血清を注射する)。
さすがにこの展開にはがっかりを通り越した思いを抱いてしまいました。
ただ恋愛ものの映画としては成功作だったようで、
隣にいた女性は泣いていたことを付け加えておきます。