2017年11月通信「2017年のインフルエンザ」(医師:内山明好)

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内山明好がラジオで「2017年のインフルエンザ」について解説いたしました。
出演番組は、bayfm(ベイFM [78.0MHz] エフエムサウンド千葉)の朝の番組「POWER BAY MORNING」です。
◆日時 2017年10月31日(火) ≪6時45分頃≫フィールド・レポート

Q1:今年はすでに9月に東京でもインフルエンザによる学級閉鎖が起こるなど、全体的に時期が早いみたいですね?

A1:昨年(2016年)も10月くらいから流行が始まっていつもより早めかということであったかと思いますが、年によって流行の始まりはさまざまです。

今年は9月の時点で東京に限らず、いくつかの県で学級閉鎖が出ていますし、寒い季節のない沖縄などでも流行がはじまっています。
ただ大人に広がっているわけではないので全体としての患者数はそれほど多くないのが実情です。

Q2:毎年、「今年はA香港型、今年はAソ連型」が流行・・・というようにいろいろな流行の「型」がありますが、そもそも「型」は何種類くらいありますか?今年はどの「型」が流行しそうですか?

A2:インフルエンザウイルスは基本的にA、B、C型の3種類があり、そのうち毎年寒くなると流行するのがA型とB型です。A型ではウイルス表面にヘマグルチニンとノイラミニダーゼというタンパクがあり、たとえばヘマグルチニンですとHという記号がつきますが、16種類、ノイラミニダーゼですとNという記号が付いて9種類あって、H1N1とかH3N2とか呼ばれます。

理論的には9×16で144種類ある事になります。またそれぞれさらに細かい亜型と呼ばれる変異株ありますので、同じH3N2でも香港株とかスイス株とか呼ばれます。今年はワクチンにA型はH3N2香港とH1N1カリフォルニアが選ばれています。

Q3:毎シーズンピークは、1月~2月かと思いますが、流行のピークが前倒しになる可能性は?

A3:始まりは早かったり遅かったりですが、毎シーズンだいたいピークは1月~2月で今年もこれを大きく外れて流行するような兆候は今のところないので同じようなものだと考えられています。

Q4:そして、今年は「ワクチンが不足するかも」というニュースをよく耳にしますが、これはなぜでしょうか!?

A4:熊本地震で被害を受けたワクチン製造メーカーの製造設備の復旧が追いついておらず、またワクチン株製造のトラブルで遅れが出ているのが原因ですが、現状確かに手に入りにくくなっています。

足らないという情報が流れると急いで接種しなければとまた殺到して、ますます足らなくなると言った悪循環が起こるのが心配です。

インフルエンザは治療薬もありますので、免疫が正常な大人は余り慌てずまず幼児や高齢者にワクチンが渡るようにしてあげましょう。

Q5:オーストラリアなど南半球で猛威をふるい、死亡者も多数出ているという「殺人インフルエンザ」が日本上陸秒読みか?という記事を目にしましたが、これは何でしょうか!?

A5:オーストラリアなどの南半球で流行しているのがA香港株の亜型で、このインフルエンザによる死亡数が増加しているというニュースが出ています。

インフルエンザウイルスは、確かに感染力は強いのですが、毒性、すなわち感染部位の組織を壊してしまう力はそれほど強くありません。ただ子供や高齢者など免疫力の弱い人ではインフルエンザ感染から肺炎を起こして死亡する例が多くなります。

南半球で流行しているのはH3N2香港株の亜型ですが、わずかな変異の違いで抗体がうまく攻撃できず流行が広がっていることも考えられます。ただこれがそのまま日本にも当てはまるかどうかはわからない状況ですので、一部報道では殺人ウイルスなどとあおっていますが、冷静になってしっかり予防と治療を行えばそれほど怖がる必要はありません。

Q6:そして、かかってしまった際の薬ですが・・・つい先日、新薬の申請が行われたようですが、どのような薬なのでしょうか?

A6:塩野義製薬が10月25日承認申請した新型のインフルエンザ薬は従来とはインフルエンザウイルスに対する働きが異なります。

従来のタミフルやリレンザはウイルスが気管支粘膜に侵入するところを妨害するお薬ですが、今度の薬剤はウイルスが増えることを妨害するお薬です。今年の流行には間に合いませんが、来年の流行では使えるようになっていると思います。

何にしても予防は何より大事で、特にマスクと手洗いは重要です。ワクチンも感染を完全に防ぐだけの力はありませんから、ワクチンを接種してもマスクに手洗いなどの予防行動はしっかりとお願いします。