昨年より何かと食の安全性に係わる問題が取りざたされています。
そんな中、中国産の食材に関する深刻な問題が、
悪い形で表面化してしまいました。
中国で委託製造している冷凍餃子に有機リン系農薬メタミドホスが混入し、
10人の男女に下痢や嘔吐が起こったことが報道されたのです。
被害は拡大の様相を呈し、症状を訴えた人は31日の段階で
35都道府県457人!
口に入れとたん、味が変なのに気がついてはき出した人もいたということですから、
かなり高濃度の農薬が製品についていたと思われます。
中国では何度かこのメタミドホスの残留による食中毒事件が起こっていたことも
報道されています。
この一連の報道の中で、痛ましい思いとは別に、私がふと興味をもったのは、
ある人は味の変化に気がつき、ある人は気がつかずに食べてしまったということです。
味覚を感じるのは味蕾という舌の表面にある組織です。
人は食物らしき物体を目にすると、
自分の経験に照らしてこの物体が食物であるかどうかを判断します。
この関門を通過した後、今度は味覚による関門があります。
この中で甘いと辛いは食材である可能性が高いのでここで咀嚼が起こります。
酸っぱいものは食材だったとしても熟していない、あるいは腐っている証拠となり、
咀嚼されずにはき出されます。
苦味は、本来は食物として受け入れません。
毒物のたぐいはほとんど苦味がありますので、
生命を守る知恵としてこれを拒否するようになっているのです。
この味を感じる味蕾は年齢ともに減ってきます。
味蕾が減ってくると苦味を受け入れるようになります。
あるビール会社のアンケートによると、
ビールを美味しいと思うようになる平均年齢は23歳だったとか。
このように酸味や苦味が受け入れられるのは、
ひとえに食教育、食経験のたまものです。
食の味は様々な情報により簡単に変えられてしまうのです。
(子どもは例外として)一流の食品会社が提供した食品がおかしいはずはない、
自分の舌が変だと思ってしまったために食中毒になり、
自分の舌を信じた人が助かったということではないでしょうか。
昨今、何とか星レストランガイドなどといったグルメ情報があふれていますが、
日頃から情報をあてにせず、自分の目と舌を鍛えておくことが
身を守ることにつながることになるのでしょうね。