脳内脂質代謝(イクラと睡眠質改善)

脳は重量としては体全体の2%程度しかありませんが、
全体のエネルギー消費量の20%近くを消費しています。

このエネルギー源はグルコース(ブドウ糖)ですが、
脂質もまた、神経細胞の膜やシナプスという神経細胞突起での
つながりを維持する上で重要です。

DHAは脂肪酸の一種ですが、n-3系の多価不飽和脂肪酸といって、
動脈硬化を防いだり血管が詰まる原因である
血小板凝集を抑えたりする作用があります。
またDHAは脳の血液脳関門というバリアを通り抜けて
脳実質に取り込まれ脳の代謝に利用されます。

少数例の臨床試験ではありますが、
DHA投与により認知症患者の機能改善が認められています。

DHA以外の脂質ではフォスファチジルセリンや
フォスファチジルコリンというリン脂質が
神経細胞膜やシナプスという神経細胞突起の
つなぎ目の機能に欠かせない脂質で、
神経細胞が正常な機能を営む上で重要な因子です。

フォスファチジルコリンは記憶や計算といった
脳の高次機能を司っているアセチルコリン系神経へコリンを
供給することでも重要な役割を果たしています。

イクラの中にはこのDHAとフォスファチジルコリンが結合した
特殊な脂質があり、この複合脂質を投与したところ
睡眠の質が改善したとの報告があります。
睡眠は眼球運動が見られないNon-REM睡眠と
すばやい眼球運動が見られるREM睡眠とに分けられますが、
通常の睡眠ではこれら2種類の睡眠が交互に現れます。

この2つがバランス良く出現することにより熟眠感が
得られるとされています。

このイクラに含まれる脂質は長めのREM睡眠時間をもたらし、
結果としてよりよい熟眠感が得られるようです。

サプリメントとして摂取した脂質が、
どの程度脳内の脂質に影響を与えるかまだ定まった見解はありませんが、
こういった脂質が睡眠に係わるというのは大変興味深い知見です。

睡眠の質は疲労感などにも影響を与え、日常生活の質に深く関わるため、
今後さらに研究されることが期待されます。