どうも勘違いしている人が多いような気がしてなりません。
何の話かというとクスリのことです。
クスリを飲めば病気が治る、あなたはそう信じていますか?
多くの薬剤は病気に伴って起こる症状を和らげる作用があるだけです。
あるいは病気で足りなくなった成分を補うだけです。
それでは、病気を治すためには何をすればよいのでしょうか。
基本は自分自身の治る力を最大限引き出すことです。
生体は全体が微妙なバランスの上に成り立っています。
様々な代謝反応が次々に起こって、
生体の活動を支えているのです。
あるときそれらの反応のいくつかがおかしな方向に
向いてしまうことがあります。
ある程度の規模にその異常が広がるまでは別の反応が修復したり、
代わりを務めたりして全体のバランスが崩れないようにしています。
ところが、このバランスの乱れが大きくなると
修復不可能なところまでいってしまい、病気が発症することになります。
生活習慣病はまさにこのパターンです。
従って病気を治すためには、
このバランスを元に戻してやることが必要な作業ということになり、
また元に戻らないまでも、それに近い状態で
バランスを取り戻してやればよいことになります。
病気を治すためには自然治癒力を邪魔しないように、
またはその治癒力が働く方向にうまく持って行くようにすればよいのです。
ですから薬剤も、そうしたことを基本に使っていかなければいけないはずです。
医師である自分が言うのも変な話ですが、
どうも医師という職業は、病気を診断して治す仕事だと
思い込んでいる人がかなり多いと思います。
診断はします。ですが、治すのは医師ではありません。患者さん本人なのです。
医師の仕事は、患者さん本人が病気の治る方向に
向かっていくように指導し、薬剤は、
それがうまくいくように手助けすることを基本に使用すればよいのです。
どうも患者さんの症状を急いで取らんがために、
薬剤を多く用いて、今度はそのクスリのためにバランスを崩して、
その崩れたバランスを元に戻そうと別の薬剤を用いて、
結果として高齢の患者さんに10種類以上の薬剤を投与する結果になるのです。
何の病気にしろ、なってしまったらその病気と対話するくらいの気持ちで、
どんな方向を向けば良くなるのか、
あせらずに考えることが第一だと思います。
ちょっと概念的すぎてわかりにくいでしょうか?
病気とクスリの関係については、今後とも書いていきたいと思います。