「企業変革」と「ダイエット」、ちょっと似ても似つかぬ2つのテーマですが、意外に多くの共通点があります。
私は現在、製薬企業の業務改革などのコンサルティングも手がけているので、今回はそんな二つのテーマの共通点を探ってみました。
まず1つ目の共通点としては、『明確なメッセージ』でしょうか。
会社で組織を変革するときには変革の先導役が必要です。
それは必ずしもカリスマ的リーダーである必要はありません。
わかりやすいメッセージで「変わらなければいけない!」と多くの人が「腑に落ちる」戦略、それがあれば、会社は変革に向かって動いていきます。
組織改革は失敗することも多いですが、失敗理由の多くは変革の裏に隠された意図と表向きのメッセージが食い違っていることです。
それが簡単に見透かされてしまうので、「そんなこと言っていても本当はこれが目的でしょう」といった白けた雰囲気になってしまい、社員は変革を本気で受け取らなくなるのです。
ダイエットも似たようなところがあります。
ダイエットも体にとっては一種の変革です。体は会社の組織と同じように、各臓器が調和を取って働いています。
しかしいつの間にか、脂肪が余分にたまる方向に各臓器が働いた結果肥満となるわけです。
それは倒産する企業とよく似ています。
過去に倒産した企業の共通点を見ると、例えば、山一証券では現場で多くの無駄が発生しているのに、組織の責任者はいっさい指示を出さない。
あるいは自分たちに都合のよい理論がまかり通って、顧客に必要なものは何かという視点が見失われ、ついには顧客から見放されてしまう。
気がついたときには借金がかさんで債務超過となり、倒産ということになってしまったわけです。
最近では日本航空もそうですね。
社内の論理が世間一般の常識から外れてしまった結果ともいえるでしょう。
肥満も全く同じです。
こんな脂っこい物をたくさん食べていれば肥満になる、と分かっていながら止められない。
テレビを見ながらついポテトチップスやチョコレートに手が行く。
頭でわかっていて何とかそんな癖を直そうとするが、何かにつけて都合のよい理屈をつけてしまう。
今日はちょっと疲れたからいいだろう、今日はいいことがあったから特別だ、などなど。
そうして次第に赤字ならぬ脂肪がたまって、債務超過すなわち肥満となり、生活習慣病を発症して、めでたく会社更生法の申請ならぬ医者通いが始まるわけです。
さて、倒産しかけた企業が立ち直るためには、先に述べた変革に向けたわかりやすいメッセージと腑に落ちる戦略が必要となります。
たとえば日産自動車ではゴーン社長の明確なメッセージと、いくつかの工場閉鎖による減量作戦という目に見える戦略が功を奏しました。
ダイエットも全く同じです。
ダイエットに向けたわかりやすいメッセージとなるほどと自分で納得出来る戦略、これが重要なカギとなります。
単にダイエットしようでは、メッセージとして弱いのです。
しっかりと具体的な目標、いついつまでにこうなる、という明確なボディイメージを持つことが重要です。そしてそれを周囲に宣言します。
拙著、「Q脳ダイエット」でも書きましたが、指令を出すのはもちろん脳です(Q脳ダイエットで言うところのS脳)。
しかし脳だけがわかっていてもダイエットは成功しません。
同じ脳の中にも抵抗勢力のQ脳があります。そのためQ脳をはじめとして各臓器が納得してくれるようなメッセージでないといけません。
そして各臓器のことを考えて、バランスの良い食事をするという行動が必要となります。
次に自分だけにしか通用しない理由づけはしないということです。
たとえば今日はちょっと疲れたからといって、チョコレートケーキを食べているとしましょう。
これはダイエット宣言を聞いた周囲の人間から見たら、理由はどうあれおかしいと思うでしょう。
さらに無駄の排除。これは会社を建て直す際に、お金の出入りを厳しく管理するのと同じで、食事量と運動量のバランスをしっかり考えて、カロリー出納の無駄に鋭く切り込んでいきます。
会社の立て直しとダイエットとどちらがやさしいか、難しい問題ではありますが、少なくともダイエットに成功した方は、会社においても変革のリーダーとして、会社に大いに貢献できることでしょう。
ぜひそんな視点も持ちながら日々のお仕事に努めていただければ 幸いです。