今年もあっという間の1年でした。昨年のお正月がつい先週くらいの感覚です。
先日の誕生日で私もついに60歳、還暦となりました。お祝辞をいただきました皆様に改めて御礼を申し上げます。
昔の還暦というとすごい老人のように感じていましたが、いざその年になってみるとまだ40歳代とあまり変わらない感覚です。とはいえ人やものの名前が思い出せなかったり、短期記憶もメモリーの容量が減ったりと多少は老いを感じてはます。
さて2014年のできごとで私の中で最も印象深かったひとつはSTAP細胞騒動でしょうか。
最初は単に熱処理すると細胞が先祖返りしていろいろな細胞に分化する能力を取り戻すということで、夢のような話と驚きましたが、結局その後様々な、研究者にあるまじき行為が明るみに出て最終的に論文取り下げ、再現実験もネガティブな結果で終わったようで、あの騒動は何だったのかという感じです。
ある現象を説明するためには「仮説」が必要になります。
その「仮説」が正しいかどうかを証明するために実験を行います。
しかし最初に考えた「仮説」通りに実験結果が出ることはほとんどありません。
そうすると最初の現象と実験結果の間をつなぐ別の「仮説」が必要となります。
新たな発見というのはこうした実験と検証の積み重ねで矛盾のない説明ができて始めて公になるものです。たとえば自分自身の立てた仮説に反するような実験結果が出たとき、元の仮説に無理矢理つじつまを合わせるような解釈をすると、それに都合のよいデータだけを拾ってきて仮説を組み立てるようになります。
そうすると必ずどこかに矛盾が生じてつじつまが合わなくなるのです。
ちょうどジグゾーパズルの1ピースを合わないところに無理矢理はめると後で完成できなくなるのと一緒です。
とはいっても世の中で出回っている情報のほとんどは仮説の域を出ていません。
特に健康や栄養に係わるものは仮説だらけと言っても過言ではありません。
これは検証のための実験を行うことが極めて困難だからです。テレビの健康番組で次から次へと異なる情報が出てくるのはこのためです。たとえばちょっと前まで20分以上連続して運動しないと脂肪は燃焼しないといわれていました。
しかし厳密に臨床試験を行ってみると、運動の最初から脂肪は使われていることがわかりました。もちろん運動の初めに使われるのは糖分が主体なのは変わりがなく、ただ20分以上運動して筋肉内の糖分が枯渇してきてはじめて脂肪が使われるという話の方が「仮説」としてはきれいでわかりやすいため、それが一般化したのでしょう。
ところが実際はそうではなく、小刻みな運動でも十分脂肪は燃焼するとなったわけですが、もしかしたらこの説にしてもこの先別の実験結果が出た途端に間違った仮説でした、となってしまうかも知れません。
そんなことをいったら何を信じてよいかわからない、と怒られそうですが、現実の科学のレベルとはその程度なのです。ですから科学の限界をよくわきまえた上で、現在得られる情報の中で最も正しい思われる情報を選択してそれを実行するしかありません。
その意味ではしっかりした指導者について指導を受ける中で、『自分に合っているものを自分自身が見つけて行んだ』、という気概が大切になります。
もう一つ印象に残ったものとしては、手前味噌で恐縮ですが、遺伝子ダイエットが話題になり、いくつかのマスメディアに取り上げていただいたことです。
3月にBLENDAという女性誌にダイエット情報として一般の方からの素朴な疑問と情報の真偽についての特集がありました。
◆雑誌「BLENDA」(2014年3月発売)
http://www.metabo-help.com/0060/0061.html#1403_blenda
また同じく3月にシティリビング誌で女性のかくれ肥満について、さらに3月にHANAKOの通常版と5月に特集号のカラダ企画書で遺伝子ダイエットについて特集していただきました。
◆2014年3月シティリビング掲載
http://www.metabo-help.com/0060/0061.html#1403_cityliving
◆2014年5月15日発売のHanako特別編集「カラダ徹底メンテBOOK」掲載
http://www.metabo-help.com/0060/0061.html#1405_hanako
同じく3月にTBSのスゴ腕専門外来スペシャルで、特殊外来として遺伝子ダイエット外来を取り上げていただき、その後かなりたくさんの方が当院へ来院されました。
11月には「日経朝とく」というテレビ東京系BS放送の朝のニュース番組でメタボ特集として4日間、鶴田真子とともにメタボの原因から栄養指導を含む治療までを解説させていただきました。
前段で科学は仮説だらけというお話をしたばかりですが、そんな中でも可能な限り科学に基づいた信頼できる情報をわかりやすくお届けしようと努力しております。
2014年ももうすぐ終わりますが、2015年も皆様に取りましてよい年になりますよう祈念申し上げます。くれぐれも正月太りにはご注意を。
来年もどうぞよろしくお願い致します。