<内山明好:医学博士>
東京オリンピッをひかえて、厚生労働省と自民党間で、レストランなど公共の場での喫煙を
どうするかという受動喫煙防止法が話し合われていますね。
私の父は医師でしたが、かなりのヘビースモーカーで、心筋梗塞により私が21歳の時に亡くなりました。
父の亡くなった年齢に近づくにつれ、喫煙者でなければ父ももう少し長生きできて、いろいろなことを
話せたろうと残念に思います。
そんなこともあって私は「喫煙は百害あって一利無し」という立場ですので、議論している間にも
タバコ関連の心筋梗塞や脳卒中での死亡が増えているわけですから(タバコを吸うことによって減る
病気はありません)、とりあえずさっさと全面禁煙に踏み切って、それで問題があったら議論してはどうか と
いいたいのですが、政治家は色々な有権者とのしがらみから簡単に結論が出せないでいるようです。
ところで禁煙外来に来る多くの人に聞いてみると、1日20本以上吸うようなヘビースモーカーでは
色々健康被害が出てくるでしょうが、『本数を減らせば問題ないのでは?』と考えている人が多いようです。
実際禁煙治療が必要な目安として使われるブリンクマン指数も1日あたりの本数×喫煙年数であり、
多く長く吸った人に害が出るような印象を与えています。
ところが最近、141件の疫学試験の論文データを集めて再解析 (システマティックレビューといいます)した
データが発表になりましたが、この中で、1日1本吸う人と1日20本吸う人のリスク比較をしています。
細かい計算の説明は省略しますが、1本吸う人のリスクは20本吸う人のリスクの何%であるかという計算を
しています。
タバコの本数と心筋梗塞などの冠動脈疾患や脳卒中を起こすリスクが直線的に比例するのであれば(つまり
多く吸えば健康被害も出やすくなるのであれば)、1日1本の人は20本の人に比べてリスクは5%(20分の1)程度の
はずです。ところが結果は、冠動脈疾患では、男性で53%、女性では38%、脳卒中のリスクは、男性で64%、
女性で36%となることがわかりました。
1本でも吸うと予想よりはるかに高いリスクが押し寄せるとう結果です。
つまり本数を減らす減煙は、ほとんど無駄ということになります。この結果を少し拡大して考えると
受動喫煙も予想以上に高いリスクがあることになるでしょう。
禁煙派の私としては、分煙などと中途半端なことは止めて、早く全面禁煙にしましょうと強く言いたいところです。
皆さんは、喫煙派、禁煙派、分煙派、どんな意見をお持ちでしょうか?
また、どのような情報を元に、その考えをお持ちですか?
健康的な生活を送るためには、自身の身体と向き合うだけではなく、
正しく有意義な情報を集めていきたいものですね。
その一役を担えるよう努めてまいりたいと思います。