人と水との大切な関係性

「デトックス」という言葉を聞いたことがあるかと思います。
これは本来「解毒」という意味ですが、昨今体の中の悪いものを外に出すという意味で使われることが多いようです。
栄養素を取り入れ、体の中でそれを代謝してその残りカスを外に出すための重要な臓器として肝臓と腎臓があります。肝臓は体内の化学工場みたいなもので、体の中にある様々な物質を化学的に分解して無害なものに変え、腎臓はそれをおしっことして外に出します。

腎臓には1分間にどれくらいの血液が流れ込まれると思いますか?
答えは約1リットルの血液です。

多くの老廃物は、血液中の水分に溶かし込まれて、一端腎臓の毛細血管で濾過されて、必要な成分はまた腎臓の中で再吸収されるといった仕組みをとっています。
このとき、水に溶ける老廃物のほとんどは腎臓から尿として外に出ます。

ということで水分が少ないとこの仕組みがうまく働かなくなります。
よく1日1.5リットルくらい水を飲みなさいというのは、汗などから失われる水分を補う以外に、このデトックスのためにも重要な役割があるのです。

私は、クリニックで遺伝子検査に力を入れてやっています。
栄養代謝に係わる遺伝子を検査して、脂質の代謝、炭水化物の代謝、活性酸素の処理能力などの体質を見ながら、その体質に即したダイエット指導をおこなっています。
体質に合った食事というのは非常に重要で、「水」に関しても同じことがいえるのではないかと思っています。

日本人の祖先は、この土地に2万年くらい前に住み着きました。
実はそれ以来遺伝子は、大きくは変化していません。つまり2万年前の生活環境に適した遺伝子をそのまま使っているわけです。
時は氷河期の終わり頃、北からはマンモスを追いかけてやってきた集団、南からは森の中で木の実や果物をとって食べていた集団、あるいは海岸に沿って魚や貝をとって食べていた集団、こんな人たちの寄せ集めが今の日本人の祖先です。

水に関していえば、それ以来日本人はこの地にわき出る水を飲んで、カラダの代謝水として利用しながら過ごしてきたわけです。水と栄養代謝は冒頭申し上げたとおり、深いつながりがあります。
当然水の中に含まれるミネラルや微量成分に適した遺伝子構成ができあがっているはずです。

水に含まれるカルシウムやマグネシウムなどの量により硬水、軟水という分け方があります。
日本の天然水はほとんど軟水に分類されますが、含まれるミネラルや微量成分は地方により特徴があります。
日本酒は軟水でないとうまくできません。日本酒を造る麹菌は日本の天然水でないとうまく働けないからで、各地方の銘酒の味の違いは水の違いにもよるわけです。

また有名なフランスパン職人の話では、フランスから取り寄せた水でないと良いフランスパンが焼けないといいます。パンを作る酵母菌もまたその土地の水が必要ということです。

人間の体は麹菌や酵母菌ほど単純ではないので、そこまで厳密に地元の水に左右されるわけではありませんが、やはり生まれ育ったところの水がカラダの遺伝子にとっていちばん適している「やさしい水」と言うことになるのではないでしょうか。

地方から出てきて東京で生活して疲れてしまったという方も多いかと思いますが、そんなときふるさとの水を飲んでみては如何でしょうか。
きっと遺伝子から癒され、同時に心も癒されるはずです。