ここ何ヶ月かメタボヘルプ.comの遺伝子シリーズで、その働きについて解説しています。
なるべくわかりやすくと努力はしているのですが、実際の働きそのものがなかなか難解な部分もあり、一部わかりにくいところがある点はお詫びいたします。
もし、ここはどうなの?というところがありましたら、遠慮なくメールなり、お電話なりでご連絡いただければと思います。
さてそんな中で肥満遺伝子については皆さん関心がおありのようで、時折ご質問いただくのは「肥満遺伝子がないといわれたけれど、現実肥っているのはどういうわけだ」、というものです。
これは遺伝子解説シリーズの中で何度か書きましたが、今、一般的に肥満遺伝子と呼ばれている変異遺伝子は、正確には倹約遺伝子というのがその役割を表す言葉としては正確です。
この遺伝子変異は人の体を肥らせる遺伝子ではありません。
昨今はやりの「省エネ」をもたらしてくれる遺伝子なのです。
つまりこの遺伝子変異が働くことによって、体は省エネモードになるわけです。
せっかく体自体が省エネモードなのに、過剰なエネルギー摂取をしてしまえば、省エネでない人たちより余計にエネルギーが余ってしまって、その余った分が脂肪として蓄積されるということです。
ご安心いただきたいのは、この、いわゆる「肥満遺伝子」を持っている人たちは決してやせにくいというものではありません。
たとえばMetabolismという医学雑誌に2008年に発表された臨床試験の論文があります。
これは肥満遺伝子の一つであるアドレナリンβ3受容体遺伝子変異のある人と変異のない人でダイエットによる減量効果を比較したところ、差がなかったという結果が出されています。
要は必要な食事の量は遺伝的にある程度決まっていて、それを超えて食べれば肥るし、少なければやせるというもので、肥満遺伝子があり肥ってしまった人でも上手に食事量を減らすことができれば、それなりに減量の結果は出せるということです。逆に肥満遺伝子がなくても、食べ過ぎていれば肥ってしまうのは当然のことです。
それでは遺伝子を解析してもしなくてもやることはいっしょではないか、といわれそうですが、遺伝子変異の有無がわかれば、どこまで食事を減らすかという面では参考になるといえるでしょう。
ただし、たとえば倹約遺伝子ひとつをとっても、いくつもの倹約遺伝子があるわけで、正直なところ、その中でひとつの遺伝子変異のありなしをはかってみてもあまり意味がないということはおわかりいただけるかと思います。
肥満や生活習慣病では多くの遺伝子がお互いに影響し合う中で、病気が出たり出なかったりするわけですから、様々な関連する遺伝子をはかって、その変異のあるなしで、総合的に判断する必要があるのです。
このように、遺伝子検査は未来の健康サポートやダイエットに大変有意義な手段といえます。
興味を持っていただいた方は、ぜひこのような点をご理解された上で、遺伝子検査を受けていただきたいと思います。
ドクター内山の「遺伝子」ふしぎ発見!
http://www.metabo-help.com/0030.html
アーテイジ虎ノ門クリニック
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