新型コロナウィルス感染症の見極め方 ~インフルエンザ感染症との比較~

日本国内のコロナウイルス感染症の状況は、
2020年5月23日現在PCR検査陽性患者累計16,362人(クルーズ船、チャーター便を除く)、死亡例は808人(www.mhlw.go.jp)となっています。

前回のブログでは、インフルエンザ感染症の死亡数と比較してみるとどうなるか、といった内容を書きましたが、インフルエンザに関してはあくまでも推定数で、実際に報告された数値ではないということをしっかりとご理解ください。

 

今回は、このような数字がどこから来たのかを知ることが重要というお話しです。

コロナウイスル感染症(COVID19)でかなりの死亡がでている米国でも、似たような議論があるらしく、最近インフルエンザと比較してどうなのかという論文がJAMA(米国医師会誌)のウェブサイトに掲載されましたので、ご紹介します。

<Assessment of Deaths from COVID-19 and from Seasonal Influenza; Faust. SJ, et.al. May 14, 2020: JAMA Internal Medicine online May 27, 2020>
5月初旬までのコロナウイルス感染症(COVID19)による死亡者数は約65,000人でこの数値は季節性のインフルエンザ感染症の死亡数とほぼ同数だが、医療の最前線での逼迫感とは一致していない。

米国疾病対策センターによるインフルエンザ感染症の患者数や死亡者数の報告は、他国の組織からの発表と同様に推定値である。2013~2014年シーズン、2018~2019年シーズンでのインフルエンザによる推定死亡者数はそれぞれ23,000人、61,000人であった。
ところが実際に報告された数字は3,448人、15,610人で、推定値は6倍高値である。

もとより成人のインフルエンザ死亡は報告義務があるわけではなく、推定値に頼らざるを得ないのが現実。一方COVID19の死亡も実際の報告数ではあるが、ほんとうにコロナウイルスによる死亡なのかが明確ではない。

たとえばニューヨーク市のように多くの患者が集積した地域では、心停止で救急搬送されるとPCR検査が行われ、陽性であるとコロナウイルスによる死亡者とされる(内山追記:ニューヨーク市などのCOVID19患者には貧困層が多く、無保険であるが故に合併症や健康管理の悪い集団であり、そうでなくても心筋梗塞や脳卒中などで救急搬送される可能性の高い集団である)。
そのため実際の感染症による死亡より多くなっている可能性がある。

また感染者数あたりの死亡率も混乱を招く数字で、国により1%以下から15%とばらつきが大きい。クルーズ船ダイアモンドプリセス(内山追記:COVID19の純粋な死亡率が計算できる唯一の存在と考えられている)では712人の感染者中13人の死亡で死亡率は1.8%であるが、高齢者が多かったことから調整すると一般人口あたりでは0.5%となる。

それでも季節性インフルエンザの死亡率と比較すると5倍高い数値である。比較するには対象を揃えて比較すべきで単純に得られた数字だけを比較するのは間違いの元である。

すなわちリンゴはリンゴと比較すべきでオレンジと比較してもしょうがないということである。

という内容でした。

ということで、前回の私のブログで年間の死亡者数からいうとインフルエンザ感染症の方がより多くの死亡者が出ているのになぜ気にならないの?という話を書きました。

大切なことは、インフルエンザ感染症にしてもコロナウイルス感染症にしても対策を考える上できちんと比較ができる統計を取ることが極めて重要で、私達が報道番組を見るときも、何と何を比較しているのか、まともな対象で比較しているのかどうかを見極めることです。

 

未知のウィルスを過度に恐れることなく、正しい情報を正しく取得していきましょう。
そのお役に立てれば幸いです。